曐と空 [2018]

布に刺繍

Description
本作、曐と空では自身の不適切な脱毛行為によって傷ついた皮膚の写真を用いている。膝から下の脚の皮膚の写真を階調反転することで本来黒ずんだ脱毛跡や傷口を夜空に輝く星のように見立てシフォン生地に出力したものである。生地の素材はストッキングや薄皮の繊細なイメージから選択した。また部分的に星(脱毛跡)に刺繍が施されている。言うまでも無いが、布や刺繍といったマテリアルや技法は女性を表象するものとして美術史で扱われてきた。

 何故皮膚か。フェミニズムに関心を寄せるようになったきっかけは自身の身体に起こる月経に伴う様々な身体の扱いづらさ(主にケアの繊細さ、体調不良)である。そしてその身体の扱いづらさは月経期に限らず、「女性」性として生活する中でいくつも存在していることを自覚するようになった。

 私は黄色人種であり体毛は黒である。この色相の組み合わせは実に厄介である。単純に大変目立つのだ、体毛が。しかし世間は今日も女性には頭皮以外に毛根は無いのだと洗脳する。そんな女性はどこにも存在しないし、限りなくそれに近い女性たちは自分の体に数十万〜数百万かけれる一部の者だ。作られた、女だ。半分、女を仕事とする者たちだ。そして私は女を仕事としない女だ。地球上に生きるのは女を仕事としない女が大半ではなかろうか。

 醜い足の皮膚を美しい夜空に置き換え女性の「生き辛さ」を吐露する。フェミニズムの課題の一つはその身体(女体)における生物学的側面とそこから乖離した視覚優位の文化社会環境が築き上げる「女とはこういうもの」という作られた身体性に不一致と抑圧が含まれていること。そして女性が女性であるために負う経済負担を無視していること。この考えはさして新しさはない。むしろ随分と前から書籍にも書かれている。しかし書かれる、作品が作られる、だけでその取り扱われている諸問題が終わりを迎えるのではない。それは入り口でしかなく、実践しなければいけない。私たちには圧倒的に実践が足りない。もしくはジュリア・クリステヴァの言う所の「女の時間」的考えに寄るところもあるかもしれない。反復することに意味はあると。